まぐれ/Nassim Nicholas Taleb

前書き

作業やゲームをしている間に耳が寂しくなると音楽やYoutubeの動画、Twitterのスペースを流すことがあるけども、先日に以下の動画を聞いて面白そうな本がいくつか紹介されていた。

www.youtube.com

この動画で紹介されたいた本うち一冊を読んでみた。 honto.jp

概要

人間はリスクとリターン、特にブラックスワンのような滅多に発生しないが大きな損失を与えるリスクについては正しく認識できない、ということについて書き綴った「エッセイ」である。
本書の著者は歴戦のトレーダーにして大学教授であり、著者よりも大きく稼いでいる同僚が何人も出てくるがブラックスワンの襲来とともに退場していっている様子が述べられている。

それは何故か。

稼いでいる人の多くは本人の実力とは関係なく「たまたま」稼げているだけであり、ブラックスワンが襲来した際には一気にツケを払うこととなる。そして世間の注目を集めるような人は大抵が実力と関係なく稼げている人なのでそれらの話は注意して聞く必要がある。

なお著者は、それらの人々とは逆の滅多に儲からないがブラックスワンが襲来した際に大きく儲ける手法を得意としている。普通とは異なる手法ではあるがその理由は。。。

感想

エッセイと言う通り、具体的な計算を述べているのではなく経験談を綴った本である。(但し著者はモンテカルロシミュレータを自作して利用しているらしい)なので人によってはちょっととっつき難いかもしれない。とはいえエッセイであるにも関わらず参考文献が20頁ほど掲載されているのはさすが教授だなと思わされた。 追ってられないので誰か頑張って。

投資でもなんでもだが、成功が続く間にブラックスワンを考慮して物事を進めていくのが理想である。と言うのは簡単だが、それらに気をつけて進めていくことは本当に難しい。そもそも人間は(MBAどころかDBAでさえ)ブラックスワンのような滅多に無い事象を正しく評価する事が不可能だと考えさせられる。人間は可能性の低いものは得てして無視するように作られている。
わかりやすい例としては自動車事故だろうか。確かに事故は滅多に起きるものでは無いが、一度発生してしまえば数千万円もの費用やその他の怪我などの被害が発生してしまい無保険では途方に暮れることとなる。

本書内ではシミュレーションを行っているが、単純な運ゲーであっても上位は非常な好成績を得られてしまうことが示されている。自分でも簡単なシミュレーションの計算してみたが、稼ぐ以上に生き残っている人自体がかなり少ない。投資に限らず仕事でも趣味でも、稼げているのは運か実力か、気をつけないといけないと思う(過小評価しすぎもよくないけども)。

ノイズについても触れられており、データには得てして多数のノイズが含まれていことは工学や統計を学んだ物であれば理解できると思う。教養があればノイズを考慮してデータを整形するが、世の中にはそうではなくノイズを見て法則を理解した気になる人も居るらしい。 AIもどきであろうが方程式であろうが、そこを考慮しない限りなんらかのデータでは正しく動作してしまいそうだが。。。 最近では機関投資家はAIもどきを用いて将来を予測しようとしているが、それらでブラックスワンが発生するタイミングまで予測できるのかは難しいと私は考えている。市場は多数の参加者が相互に作用して動いていくがそれらを計算するのは困難かつ莫大な計算量が必要になるとはずである。現在存在する計算式は今日までは正しくても明日も正しいとは保証は無いし、そもそも復調後が良くなる事がわかっていても襲来時にロスカットで強制決済されそうである。東証では値幅制限があるがNYには無いし。。。

また、人間の性質についても言及されており我々の行動を決定するのは情緒であり合理性ではない、という点にまで触れられている。我々は考える葦で在る前に動物なのだという点を涙を流しながらも認めなければならない。